*東京そぞろ歩き(15)北の丸公園

北の丸公園

坂本弘道

北の丸公園

 北の丸公園は、皇居に隣接している。

 ここには、幕末まで徳川氏の御三卿の一つ、田安徳川家と清水徳川家の上屋敷があった。公園の千鳥ヶ淵に面した西半分が田安家で、東半分が清水家だった。

 屋敷と共に、米蔵である御蔵地や、植木等を栽培している植溜御用地等もあった。

  それぞれの家には、立派な門が建てられていた。それが今日でも、田安門、清水門の名称と共に残っている。

 地下鉄の九段下駅で降りて、坂を少し登ると、田安門だ。 明治維新になって、屋敷は取り壊され、皇居の警護を担当する近衛師団の本部と、兵舎などの関連施設が設けられた。

 田安家の跡に、近衛歩兵第一聯隊、清水家の跡地に同第二聯隊の兵営が建てられた。終戦後、これらの建物は、ほとんど取り壊された。近衛師団の本部だったレンガ造りの建物が、わずかに重要文化財として残っている。

 公園の中の、大きな建物は、日本武道館と科学技術館だ。他の部分は、そのほとんどが緑地で、池も広がっている。公園の端の千鳥ヶ淵に沿って、散歩道がある。およそ1kmの長さだ。

夜桜や千鳥ヶ淵に人の波            弘道

この辺りは、当初土を盛りあげた土堤があった。明治41年に手入れをし、広場やあずまやを造った。また、花や木を植えて、小庭園とし、将兵の散策の場となった。

公園の中には、近衛歩兵聯隊跡の記念碑が、第一聯隊、第二聯隊ごとに建てられている。

第一師団の聯隊跡の記念碑の説明板にはおおむね次のように書かれている。

「近衛歩兵第一聯隊は、日本陸軍最初の歩兵聯隊として1874年(明治7)に創設された。大東亜戦争の終結まではこの地に駐屯し、日夜皇居の守護にあたった。西南、日清、日露の戦役、日華事変では、出征して輝かしい勲功を立てた。大東亜戦争では首都防衛の一翼を担った。近衛兵は、毎年の徴兵検査で全国から厳選された優秀な男子があてられた。」

広場の中ほどに、昭和20年代の総理大臣吉田茂がステッキを持った立像がある。吉田茂は、昭和26年にサンフランシスコで日米講和条約に調印した。

聯隊の本部の建物近くには、北白川宮能久親王(きたしらかわのみやよしひさしんのう)が軍服姿で、馬にまたがった大きな銅像がある。親王は、伏見宮邦家の出身で、近衛師団長として台湾に出征、マラリアにかかり亡くなった。公園の中には、近衛歩兵聯隊跡の記念碑が、第一聯隊、第二聯隊ごとに建てられている。

木々が多く、広場があり、緑に囲まれた庶民に愛される北の丸公園となっているが、その片隅には、昔の歴史を刻んだ記念の銅像や石碑が残されている。

日本武道館

日本武道館は、屋根が上から見ると正八角形で1964年に完成した。屋根の上の魏宝珠は法隆寺を想定し、スロープは富士山だ。

武道館と言いながら、ビートルズのライブが開かれたことをきっかけに、様々なイベントに使われている。

天皇、皇后陛下をお迎えしての終戦の日、8月15日の戦没者の追悼式も行なわれ、参加したことがある。長渕剛のライブ、イルディーボのコンサート等にも出かけた。

昨年の9月29日には、厳重な警備の元、安倍晋三元首相の国葬が執り行われた。

秋晴れや安倍氏の遺徳偲びつつ             弘道

40年前、住んでいた市谷薬王寺のマンションの4階のベランダから、真正面に日本武道館の屋根の擬宝珠が見えた。

大気汚染が激しい頃で、時々曇って見えなくなったことがあり、その日の大気の汚れを比べることが出来た。

科学技術館

館内では、ごく我々の身近にある物から宇宙開発、光の原理、等、科学技術についての様々な展示が見られる。また、実物での体験もできる。

自動車についてのモーターランドでは、自転車の発展の歴史などだ。例えば最初の自転車は木製から始まり、今日の姿までの実物を見ることが出来る。

何気なく乗っている自転車も、創意工夫の積み重ねで、今日の姿がある。

オートバイも、実物に座って、前に映った画面を見ながら、道路を走る体験ができる。スピードは手元のハンドルで調節し、本当に運転している感覚だ。さすがにカーブは勝手に曲がってくれて、はみ出すことはない。

電気モーターの力の強さ、機械のベアリングの仕組み等はなかなか面白い。薬が体の中で、どのように作用するかという解説もある。

科学技術関連での日本人のノーベル賞受賞者の業績が詳しく述べられている。

富士山のできた経緯もある。土木工事の建設現場の状況もみることが出来る。

見学は、なるべく自分で考えるようにできていて、必要なこと以外余計な説明はない。

知識欲旺盛な子供たちにとって、この展示場は、興味深いのか、コロナ禍のもとでも、小中学校の団体での見学者が多い。

何事も、なぜこうなるかということから、物事の創造が始まる。そういう点では、このような展示は、学習にはもってこいだ。

(月刊『コア』掲載文を加筆修正)

 

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